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「次のバッターは誰かしら?」
「あたしに任せなよ。まぁ、打つのはあたしじゃないけど・・・くく」
次に名乗りを挙げたのは戸田だ。ということはまたヘンテコ発明品使う気か?
「ヘンテコ言うな無礼者」
「なら勝手に人の心を読むな無礼者」
「今回のは自信作さ。その名も絶対ヒットくん!!」
そう言ってバッターボックスに現れたのはバットを持った上半身だけのロボット。
「膨大なデータバンクから相手の投げた球を瞬時に見分け!ホーミングして必ず打つ!そして・・・ヒットくん!素振りを見せてやれ!」
『Yes,master』
そう言ってヒットくんはゆっくり腕を後ろに持っていく。
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ
そして素振りを始めたのだが・・・
速すぎてバットが全く見えない・・・
「さぁ見せてやれヒットくん!」
『Yes,master』
ヒットくんがバットを構えた。さっきの素振りを見てしまった今、ヒットくんは物凄い威圧感を纏っていた。相手の投手が息を呑むのが見える。
そして第一球!
カキィン!!
「「「「おおっ!!」」」」
見事な当たりで放たれたライナー線の打球は一、二塁間を抜けた。クリーンヒットだ。
「・・・くく、どうだ薫くん。ヘンテコ発明品とは言わせないぞ?」
「あぁ確かに凄ぇよ!さ、走らないと」
これなら二塁まで回れるんじゃないか?
「・・・」
しかし、戸田は黙ったまま何も言おうとしない。
「どうした?早く走らないと・・・」
「・・・れないんだ」
「えっ?」
「ヒットくんは走れないんだ!」
「・・・はっ!?」
焦ってバッターボックスを見る。
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ
ヒットくんはまた例の素振りをしていたが、走る気配はない。というか良く良く考えてみたら上半身しかないんだから走れる訳ないか。
その間にボールは一塁のグローブに収まってしまった。
『Yes,master』
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ・・・
「・・・やっぱりヘンテコ発明品だな」
「ぐぅっ・・・」
これでスリーアウト、チェンジである。
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