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「ピッチャービビってる!ヘイヘイヘイ!」
マウンドに立った美沙が何故か自分がビビってると宣言してるが、気にしたら負けだ。
「プレイボール!」
審判の掛け声を受けて美沙の顔が引き締まる。美沙の運動神経の良さは折り紙付きなので、マウンドに立っていてもなんとなく雰囲気があった。
美沙は大きく振りかぶり、第一球を投げた・・・!
ズギューン!
美沙から放たれた神速のボールは光のキャッチャーミットに収まっても勢いが衰えず、そのままミットごと光をバックネットまで吹き飛ばしてしまった。
叩きつけられた光は吐血し、重力に従い血に伏した。
「光ぃ!!」
俺はその場に力無く倒れ伏した光に駆け寄った。
そして屈んだまま光の身体を抱きあげた。
「おい光!しっかりしろ!」
「・・・あぁ、薫くんか・・・」
光は俺を見て口元を緩めるが、顔色は悪く言葉にも力がない。
「ふっ・・・僕にもお迎えがきたようだ」
「馬鹿な事を言うんじゃねぇ!」
「良いんだ・・・自分の身体の事は・・・自分が一番・・・ごほっ!ごほっ!」
「喋るな!いま救急車を呼んで・・・」
立ち上がろうとする俺を、光の腕が止めた。
「三浦くんに・・・伝言を頼まれてくれないか・・・?」
「当たり前だろ!何だ、言ってみろよ」
いよいよ小さくなった光の声を聞き取るため、俺は耳を近付けた。
「・・・凄く・・・良い球だった・・・よ・・・ガクッ」
光から力が抜け、身体は冷たくなっていく。
「おい・・・光?嘘だよな・・・おい・・・動けよ・・・」
光の手を握り持ちあげるが、離すとストンと地面に落ちる・・・
「光ぃぃぃぃ!!!」
「ス、ストラーイク・・・」
審判の妙に気を遣った感じのストライクコールが印象的だった。
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