551人が本棚に入れています
本棚に追加
「坂井」
後ろから投げかけられたその声。
ああ捕まってしまったかと、真はゆっくり振り返る。
「昨日電話かけたら、途中で切れたんだけど。
つーかそれから全然繋がらなくなったんだけど」
「もしかしたらトンネルに落としてきたんでしょうかね」
バレバレの嘘をつくのは、どうでもいい相手の時。
「まったく、相変わらずだな。
まあいいや、来いよ」
「守口先輩、」
さっと捕まれた腕を引きながら、立ち止まる。
「なんだか今日、かなり調子悪いんですよね」
だから触るな、帰らせろ、目で言ってみる。
守口は少し鼻で笑うと、有無を言わせない力で真を引っ張ってく。
力じゃこいつには勝てないともうわかっているから、抵抗する代わりに真は大きく息を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!