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―――調理室
和哉は焼き菓子用の生地を淡々とこねていた。
亜希はオーブンの温度を確かめながら、その様子をただ見つめることしかできなかった。
オーナーも調理室の片隅で心配げな表情で見ている。
「こら! 和哉!
もっと気合いいれろ!」
ベテランの先輩シェフが和哉を怒鳴った。
「あ、すいませ――」
和哉が謝りの言葉を言いかけた時、オーナーが走ってきて、先輩シェフに耳打ちした。
「…おぃ、本当かよ……」
先輩シェフは憐れみを込めた目で和哉を見つめる。
和哉の瞳は潤んでいた――
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