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「なんだ、可愛らしい狗じゃねぇか」
薄く目を開けると、触れそうな程近くに見知らぬ男がいた。綺麗な深紅の目だ。暗闇の中、何の光も失っていない。
「『イヌ』仲間に会えて嬉しいぜ。ま、こんな場所だと、さほど感動もしねぇが」
わしわしと髪を掻き回される。少し痛い。男はにまにまと笑っている。
「これ、お前のだろ?」
赤い、鼻の長い、醜い顔のお面。知らない。左右に小さく首を振る。
「んー、知らねぇのか。ま、しゃあねぇな」
男が立ち上がる。上でガチャガチャと鎖の音がしている。
「ほら、一緒に行こうぜ。天狗」
手を縛っていた鎖が、外れた。
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