神となるため

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元気よく頷き、天狗はトテトテと走り去って行った。 「あーぁ、可愛い狗だこと」 「全くですね。こちらの犬はただのスケベなのにねぇ」 腰まで伸びた夕日色の髪を結わえ、目は細くてわかりにくいが綺麗な藍色をしている。袴からどうすればそうなるのか、9つの狐の尻尾が出ている。もふもふしたい衝動にかられるのは不可抗力だろう。頭には狐耳がついている。 「ハッ、フレンドシップだ」 「可愛い狗に変態チックな事を教えるのは止めなさい」 「あの年でキスの1つも出来ないのはねぇ。額か頬でいいんだぜぇ?」 「異国ならまだしも、この国にそのような習慣は無い」 言い合いながらも着々と準備を進める犬神を目の隅に、九尾は部屋の片付けを始めた。 「まったく、出したものを出したままにするものではないよ」 「足の踏み場はあるだろうがよ」 「お前は本当に…」 言いながらも犬神が脱ぎ捨てた服まで畳むところから、九尾が世話好きなのが伺える。 「朝飯何?」 「すましと鰆だよ。早くなさい」 「また魚ぁ?」 犬神はあからさまに頬を膨らます。 「朝から牛を食すつもりか。体にも気を付けなさい」 「イヌは万国共通で肉食なんだよ」 「案ずることはない。魚も肉だ」 「あ…」 待て待てそれじゃあ肉が食いたいと言っても牛とか鳥とかじゃなくて魚を差し出される可能性もあるのかでもそれなら牛が食いたい時には何て言えばいいんだよあぁ牛が食いたいでいいのか。と、犬神が頭を高速回転させている間に、九尾は部屋から出ていっていた。 先程とは違う一室で、犬神は朝食をとっていた。天狗は九尾に髪を鋤いてもらいながらその様子を見ている。 「朝餉?」 「今の時間なら昼餉かもしれないね。天狗、お面を取ってもらっていいかな」 「うん」 頷いてから天狗自身が面を取ると 「フ…やはり私はこちらも好きですよ」 天狗の目と髪が瞬時に黒に染まった。 「そう?僕はなんか力入らなくて嫌いだよ」 「面のけたら人間とほとんど変わりねぇんだ。しゃあねぇだろうがよ」 面を取った天狗は、限りなく人間に近づく。そして、その面は天狗自身でしか外すことは出来ない。 「犬神、物を食べながら話すものではないよ」 「へいへーい」 鰆を骨まで綺麗に食べた犬神は、手をあわせて数秒黙祷した。 「ごっつぉさん!さーて、今日の予定は何だ?」 「風雷神に会いに行こう。天照にはまたいずれ。天狗は初対面になりますね」
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