神となるため

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「温度差がある双子っていうのは犬神から聞いたよ」 「よっしゃ、行こうぜ!」 天狗が再び面を頭につけると、目と髪が元に戻る。犬神は庭に出て目を閉じ、天を見上げる。薄い青が広がり、南には遠く光る天道。 犬神が薄く目を開けた刹那、柔らかな光に包まれる。光はすぐに消え、残されたのは1匹の豺。成人がなんとか3人乗れるくらいの大きさがある。 「乗りなっ!」 これが犬神なのは言うまでもない。豺は体勢を低くし、2人を待つ。 「言われなくても、元からそのつもりだよ。さ、天狗。先にお乗りなさい」 「ん」 2人が馬乗りになる。 「しっかり掴まれよ。翔ぶぞ!」 言うや否や、犬神は一気に跳躍した。天狗はギュッと目を閉じ、顔を豺の背に付けている。九尾はそれを守るように、上から覆い被さっている。 「平気か!?」 「んー…」 「大丈夫だよ。でも急ぎなさい」 「へいへい」 空を蹴りながら、何処ともわからぬ所へ駆ける。目的地は遠くない。 「久しぶりじゃねぇか!」 「久しぶりだね」 何処ともわからぬ所。天でも地でもない。言うならば空(くう)か。そこに2人の青年。 1人は雷神。派手な金髪は好きな方向に跳ねている。半袖の着物に下駄。目元に稲妻のような模様がある。頭の後ろには例の太鼓が、いまでも稲光を発している。 そして風神。蒼を帯びた銀髪は、風に任せて揺れている。指まで隠すほど長い袖の着物に、こちらは雷神と同じく下駄。両肩から両腰にかけて、布のようなものが掛けられている。 「そっちのちっせぇ餓鬼は誰だ?」 「そっちの小さい子供は誰かな」 同時に同じことを違うように言う。 「この子は天狗。犬神が拾って来たんだよ。ほら、天狗」 九尾に促され、天狗が口を開く。 「は、初めまして。天狗です」 「んなに緊張すんなって!」 「そんなに緊張しなくていいよ」 「お前ら相変わらずだな」 人形に戻った犬神が会話に入る。双子は何も変わらない。 「俺らが変わったら一大事だぜ!?」 「僕らが変わったら一大事だよ」 「それこそ天変地異だな!」 「それこそ天変地異だ」 「人の子に俺らは変えられねぇよ!」 「人の子に僕らは変えられないよ」 人知に及ばぬ神は変わりはしない。人は天には届かない。 「で、今日は何の用だ?」 「で、今日は何の用?」 「用というか、挨拶しに来ただけなのだけれどね。天狗も山神の1人だろう?いつまでも引き込もっているわけにもいかないからね」
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