シュレディンガーの僕

5/14
前へ
/14ページ
次へ
 何一人でテンションが上がっているのだろうか、朝っぱらから声が大きい。近所迷惑だからもうちょっとボリュームを下げて欲しい。   「ああ多世界解釈から“シュレディンガーの僕”なのね。いやでも、おかしくないかそれ?」 「へ?」 「そもそもシュレデインンガーの猫は量子力学の考え方を批判することであって、別に君が告白をしたことはミクロな話と関係ないだろう。よく勘違いされてるけど、もし君がシュレディンガーを名乗りたいんだったらそうだな……」 「うるさいうるさい!僕ってこんなに理屈こねこねのうるさいやつなのか!?」 「残念だけど、そうみたいだね。気づけてよかったじゃないか」    僕、まぎらわしいから「した僕」と呼ぶことにして、した僕は何やら伝えたいことがあってやってきたみたいだ。   「もうめんどくさいから、単刀直入に。まだの僕よ、告白するのは止めるが良い」 「な、何でお前にそんなこと言われなくちゃならないんだ」 「僕は告白をした君だぞ。そんな僕が言うのだから答えは見えてるじゃないか」 「……フラレル?」 「それもあっさり」    今、ひどいネタバレを聞いた気がする、じゃなくて聞いた。こいつは僕の未来を確定してしまったのだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加