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「いや、ありがとうわざわざ教えてくれて」
そうしてどこかへ行こうとしたときだった。
「あきらめんな!」
「へ?」
僕とした僕の声が重なって飛び出していた。しかし反応を見るとどうやら言ったのは彼ではなくて、つまり。
「シュレディンガーの僕、“告白しなかったバージョン”参上!」
ヒーローみたいな名乗りを上げて、また僕が新たに現れた。カッコをつけているつもりだろうが、言っていることはなんとも情けない。というより僕はこんな恥ずかしいことが出来てしまう男だったのか。
「はいはいまったく、お前はひどいやつだな。まだ何も知らない彼にこんなひどいネタバレをして」
「決まってるんだから仕方ないだろ」
「告白はするべきだ!」
「結果がわかっててもか!?」
「そうそう」
僕の目の前で、僕と僕が言い争いを始める。手は出ないだろうが、ずっとぐちぐち言い続けるに違いない。
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