シュレディンガーの僕

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「そんなバカなことはない!」 「人生は長ーい道だ。結果が決まっててもやったことに無駄なんてない。そりゃあ死ぬかもしれないとかそんなことならやらないけれど、今回は告白なんだ。絶対に後に活きてくる」 「それでこんな辛い目に合うんだって」 「僕はそれでも実際に告白したかった!」    しなかった僕は今、とても気になることを言った。それでも告白したかったと。それはストレートに受け取るならば、したくても出来なかったということだ。それは一体どういうことなのか、気になって耳をすませる。   「いくじなしだったんだ。何だかこの関係を壊したくなくなって、結局何も言うことが出来なかったんだ。これはホントに辛くて、二週間近く喉にご飯が通らなかった」 「そんなことないだろ」 「大げさなんかじゃない。それほどに僕は自分が行動出来なかったことが悔しかった。比べたら君はとても勇敢で、けれど臆病者だ。その経験は今一番欲しいものだ。けれどもうそれは手に入らない、このタイミングだと」 「う、ううん……」
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