第一章

4/70
前へ
/139ページ
次へ
「推薦したのが悪いんだよ。あのな、本人に頼み込むんじゃなく『私この人とやりたいんです!』って言ったら、何かしら河野と自分の間に勘ぐり入れたくなるだろう?  端的に言うなら、アイツ等もう付き合ってるんじゃね? みたいな、変な誤解を招きかねないだろ」 「あぁ、確かにそうだね。私が八綻君を推薦しちゃったんだから、クラスのみんなに誤解されちゃうかもね」  かもね。ではなく、既に誤解されているに違いない。  ほら見てみろ。自分達以外にもちらほら生徒が残っているというのに、そいつらの談笑が全く教室内に響いていないのは聞き耳を立てられている訳で。  つまり完全に誤解されている。今日や明日の話のネタになるよう、しっかり会話を盗み聞きされているのだ。  だから溜め息が出てしまう。委員長に無理矢理なれされたのではなく、クラスから注目の的にされた事に。  それで自分はげんなりとしているのに、何故だか河野に至っては気にしていないようなのが不思議だ。普通こういうものは女子の方が気にするのではなかろうか?  偉く余裕な態度を見せてくれる河野に、その事を尋ねずにはいられなくて。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加