プロローグ

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 しかし、手元に何も情報が無いのだから車の特定は出来ず、自分の記憶が取り戻され次第捜査が再開されるだとか。要するに、何か思い出したらご一報をという捜査打ち切り。    これには親も腹を立てていた。だってそうだろう? 愛する我が子が大怪我をしたというのに、その犯人を警察は捜さずに投げ出したのである、怒りも当然だ。    しかし同時に、手も足も出ない状況だとも理解をしているから泣き寝入るのがせいぜいである。だからその矛先が、愛する息子に「早く記憶を戻せ」って向いたのはいかなものか……    そんな親の期待に応えるべく、一週間に1度の頻度であの場所へと赴いている。そう、事故のあったあの坂ばかりの住宅街へ。    2年後の9月17日、平日。現在。文化祭を一月後に控えた高校2年生の朝は、残暑で照りつける太陽に文句を言いたいのが今の心情だ。    全く、9月になってもう17日を過ぎたというのに鬱陶しいこの暑さでは、秋なんて季節は訪れはしないのかと心配する。    などと、そんな訳があるハズない杞憂を浮かべながら、汗だくの制服をパタパタさせて坂道を登る。そうして事故現場である、7方向へと道が別れている分岐点(スクランブル)へと着いた。
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