プロローグ

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 朝という事もあり通行人は殆どいなかった。とはいえ早朝だという事でもない。  自転車通学だった中学校と家の真ん中辺りに高校があり、その高校と家の中間やや家よりにこの坂道があって。言わば、徒歩通学途中に立ち寄ったという具合で。  朝学活開始時刻までにはまだ余裕があるものの、かと言ってあんまり時間を掛け過ぎれば遅刻しかねない。携帯電話を開いて時間を確認すれば、登校時間を省いて猶予は20分前後。  その時間を悠々と使って自分は見て回った。発見現場、その周辺、毎週こなしている習慣をこなせば、何も思い出したりはしないいつもの成果で終わる。  ハズであったのだが。  7方向に別れている道の1つ、学校へと向かういつもの道だというのに、今日に限っていつもとは違っている。明らかに違っていた。  道路が何かの工事で封鎖されているといった、日常の域を越えない変化などではない。明らかにそう、いつの間にか道が消えていたりといった非日常の類。  この2年間で毎週通っているこの道に、全く知らぬ石段が新たに出来ていたのである。けれど、突貫工事をして真新しく石段を作ったという訳でもなさそうで、汚れや風化具合から、まるで昔からそこにあったかのように思わされ。  新たに出来たハズなのに、古めかしさを感じるのは矛盾している。そう、その矛盾がどうにも気になってしまったのだから、自分はその石段を登った。
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