プロローグ

5/6
前へ
/139ページ
次へ
 と好奇心に駆られて行動してみたはいいものの、思った以上に段数のあった石段を登りきった時にはヘトヘトになった。  残暑厳しい朝だというのに、カッターシャツの下は汗だらけで下着が肌に張り付いているし、汗を拭うタオル類を持っていなかった事を後悔してしまう。  仕方無く袖元辺りで額の汗を拭い、息を整えてから顔を上げる。  苦行のような階段登りを終えた先、そこには、廃墟のような社(やしろ)が1つ存在していた。  人の手がまるで入っていない、自然のままに伸び放題な木々が生い茂り、腰まである雑草と腐葉土の溜まり場。  そこに、何年放置されたのか分からないくらいに廃り切っていた神社が建っていたのである。  神は神でも、邪神とかそういうのが住んでいそうな、神聖の対義語が似合う不気味な建物があったのである。  崩壊間近の建造物、更には何かが化けて出そうな雰囲気を醸し出していて、近付く事すら億劫(おっくう)になりそうなのであったけれど。  恐怖心で逃げ出すより、何故だか懐かしくも惹かれるような気持ちに流されてしまって。靴のまま神社へと上がり、建て付けの悪い扉を開くのだった。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加