プロローグ

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 開いた扉から入る光が唯一の光源なので、中の様子はあまり見えなかったのだけれど、中も中で相当な廃れ気味であった。  床は歩く度にギシギシと音を鳴らし、見上げれば屋根を支える支柱は腐り折れており、壁は染みとカビで変色している。埃と異臭が鼻を突いてくるのだから、腕を押し当てるしかなく。  荒(すさ)んだ薄暗い屋内を進んで行き、数歩しない内に行き当たった最奥。そこに、奉られているかのような巨大な石を発見した。  大きさは横広がりに傾いた教卓くらいのものだった。その石には縄が括りつけられており、ボロボロではあったが白い布も結びつけられている。  それ以外にめぼしい物などは無く、この石を奉る為だけに作ったような祠(ほこら)なのだろうと勝手に解釈した。とはいえ今やその信仰も無くなったのか、社はいつ倒れてもおかしくはない限界寸前の状態である。  2年近くも足を運んでいた場所での新たな発見に満足し、そういえばこの付近に住んでいるアイツはこの神社の事を知っているのだろうか? と思いながら、携帯で現在時刻を確認すれば。  猶予などとうに使い果たして、今まさに朝の学活が始まる時刻である。自分は慌てて神社を後にし、この場から立ち去る。  そうして、遅刻をするという大失態を犯してしまったものの、自分は何も変わりない日常を過ごしていく。  ハズであったのだ。
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