殺意

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身体の震えが止まらない。 頭の中は真っ白で何も考えられない。 ただ、汚物で汚してしまった下着の不快感だけが、腰の下辺りに纏わりついているのが微かにわかった。 父は、ほんの少時(しばら)く、取り上げた受話器に向かい、低くドスの効いた声で、何かの呪文の様な言葉を吐くと、サイドボードの上の鍵を乱暴に掴み取り、家を出ていった。 ソレックスのキャブに、蛸足デュアルマフラーを組んでいた父が所有するZ432の排気音が、それは打ち上げ花火が飛んでゆく様な勢いで遠のいていく。 僕は大きな疑問符を胸に抱え、 何時までも汚れた下着さえかえる事が出来ないまま、 只、便座に腰を下ろし天井の奇妙な染みを眺めていた。
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