四畳半ニート神話

7/17
前へ
/166ページ
次へ
「ここでちょっと待ってろ、今開けるから」 「へ?開ける?」 ロビーらしき所の中央部まで来て、再び坂無さんが足を止める。 彼女は振り向くこともせずに僕に向かってそう言うと、胸元から黒い塊を取り出した。 ん?あれは……無線機か? 洋画とかでよく見るタイプのやつだけど、どうしてそんなものを……。 「あーテステス、こちら坂無ぃー。応答どうぞー」 まったく緊張感の無いだらけきった声を上げる坂無さん。 若干の間を置いて、無線機から応答の音声が流れる。 『こちら大橋、どうぞ』 「ターゲットを保護して帰還した、入り口開けてくれい」 『了解』 蚊が鳴くような、か細くて小さな声が無線機から流れ、それと同時に地面が唸る。 何事かと数メートル先の床に目をやってみれば、そこには先ほどまでは確かになかったはずの大穴がぽっかりと。 相当深いところまで続いているのか、ここからでは階段らしきものがあるということしかわからない。 これが坂無さんの言っていた入り口、だろうか。 「ほれ、入るぞ藍原」 「あ、はい……」 呆気にとられたまま、坂無さんの後に続く。
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加