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「ここでちょっと待ってろ、今開けるから」
「へ?開ける?」
ロビーらしき所の中央部まで来て、再び坂無さんが足を止める。
彼女は振り向くこともせずに僕に向かってそう言うと、胸元から黒い塊を取り出した。
ん?あれは……無線機か?
洋画とかでよく見るタイプのやつだけど、どうしてそんなものを……。
「あーテステス、こちら坂無ぃー。応答どうぞー」
まったく緊張感の無いだらけきった声を上げる坂無さん。
若干の間を置いて、無線機から応答の音声が流れる。
『こちら大橋、どうぞ』
「ターゲットを保護して帰還した、入り口開けてくれい」
『了解』
蚊が鳴くような、か細くて小さな声が無線機から流れ、それと同時に地面が唸る。
何事かと数メートル先の床に目をやってみれば、そこには先ほどまでは確かになかったはずの大穴がぽっかりと。
相当深いところまで続いているのか、ここからでは階段らしきものがあるということしかわからない。
これが坂無さんの言っていた入り口、だろうか。
「ほれ、入るぞ藍原」
「あ、はい……」
呆気にとられたまま、坂無さんの後に続く。
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