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「うーーーんーーー……」
「お前も一人前の大人になる時が来る。かわいい奥さんだって旅の内で見つければ、母さんだって喜ぶぞ?」
この言葉が決め手だった。昔からジャックは「母さんが~」といったセリフには弱いらしい。きっとマザコンなのだろう。椅子から立ち上がると、玄関の扉を開けながら一言。
「履歴書取ってくる」
そんな息子の後ろ姿を、父は「計画通り」と言わんばかりの邪悪な笑みで見送るのだった。
そして数十分後、ジャックは不機嫌そうなロイに睨まれながら履歴書を書いていた。
「その食べかす、何?」
「履歴書食ってたんだよ」
「ああそうかい。じゃあこれからお前の飯は履歴書でいいよな?嬉しいよな?」
「大人げないねぇー。母さんと食事してたって言ったら違うキレ方してただろが」
「俺を差し置いてウマイもん食いやがって!腹立とぅん!!」
「ノラねえからな」
「…………しゅん」
「きもいよパパ」
「何だよ急に真面目くさりやがってよ……猫かぶってりゃ乗り越えられる世の中じゃねえんだぞ、あはーはーん!!」
「ノラねえからな」
「ちっ……」
苛立ちから何故かテンションが高くなった父と関わるのが面倒臭くなった息子は、着々と勇者になる準備をこなしていくのであった。
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