健気か真面目か萌えますか

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ジャックが勇者になる為に色々と手続きを済ませている頃と同じ時間帯。場所は変わり、隣の町のとある立派な感じの屋敷。 「…………」 藍色のショートヘアに、緑色の不思議な空気の漂うローブを身に着けた物静かな雰囲気の少女が、薄暗い部屋の中で淡く黄色い光を放つ魔法陣の上に立ち、集中するように目を閉じては手の平が下に向くように両手を前に出していた。 すると少女は突然目を見開き、大きな声で奇妙な言葉を口走った。 「照らせ!フラッシュ!」 魔法。少女が全身から放たれては部屋を明るく照らす光の球は、紛れもないそれだった。 部屋が照らされると、部屋の隅に立ち尽くしていた、少女と同年代程度と思われる若いメイドが笑顔で少女に近寄りながら賞賛の声をかける。 「ありがとうございます!この屋敷で光の魔法を上手く使えるのはお嬢様ぐらいだったもので……」 それに対し、少女はニコリと微笑み返す。 「いいんです。皆の役に立てたなら、それで嬉しいんです」 「ホントにお嬢様は優しいんですね……私、お嬢様がいるこの屋敷に仕えられて嬉しいです……」 感無量とばかりに嬉しそうに返すメイド。魔法陣に近寄り カチッと足元のスイッチを押して魔法陣の光を消した。 「……え、ちょ!?その魔法陣、電気で明るくなってただけなんですか!?」 「やだなーもぉ、雰囲気ですよ雰囲気。この方が何となくカッコイイでしょ?」 「カッコイイって……私はてっきり魔力を高めるために用意してくれたのかと……」 「あははは。なわけないっしょ」 「何それ!?話の冒頭ですんごい魔法しでかすみたいになってるだけに気恥ずかしいですよ!!」 「いや、かっこよかったですよ?話の冒頭だけ。フラッシュって響きがちょいショボかったですけども」 「もぉ!!ヒドイです!!」 メイドのお茶目なイタズラに赤っ恥をかく羽目になった、このお話のヒロインであった。
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