健気か真面目か萌えますか

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「本当にレイラは意地悪です……昨日はウシガエルを全力疾走しながら持ってくるし……」 お茶目なメイド、レイラの不満をぐちぐちと呟きながら屋敷の廊下を歩く少女。 この魔法少女、メリル・アシュクロフトは、ちょっとカッコよく言えば由緒正しい魔導士一族の家系に生まれたお嬢様でもある。魔法の才能はけっこう凄いらしく、生後三ヶ月の時点ではおちょこ一杯の水を高熱で蒸発させる事ができていたとか。 幼なじみであり彼女の部屋掃除担当でもあるお茶目、というかイタズラ好きなメイドのレイラの事は五才の時に某呪いのビデオから現れる怨霊のコスプレで驚かされてからは、苦手なタイプの人間として認識している。それでも何だかんだで仲が良いのだから、ちょっとした腐れ縁なのかもしれない。 そんなメリルも、今年で17歳。頭の中はまだお花畑な事もある。例を挙げれば、白馬に乗った王子様がさっそうと自分を連れ去って行ったり、街角でぶつかったイケメン不良系男子と恋に落ちたり、河原で散歩している頼れるお兄ちゃんと仲良くなってウフフアハハ捕まえてごらんな展開になったり。なかなか痛い。 でもそんな事は一切ない。それが現実なのだ。 「夢は夢のまま……かぁ……」 叶うわけないだろ。と言いたい背中を執事やメイド達に見せつつ、父親に用事で呼ばれているメリルは廊下に並ぶ扉の真ん中のそれに入っていった。
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