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―戦線学園敷地内。 北西の位置にある大きな慰霊塔。それは、戦いで殉職した者や命を落とした者達を弔う神聖な場所であった。 ここで祈りを捧げていた一人の生徒がふと空を見上げた。 綺麗な星空であった。月明かりが眩しく、夜空はほんのり明るい。 そんな景色に見とれていると、一瞬空に不穏な影が過った。それは翼が生えており、生徒は顔色を変えた。 「……魔族っ!?」 生徒は急いでこれを伝えるために学園の理事長の元に駆けた。 広い広い敷地内、生徒は全力で理事長室を目指した。   バァアアアアアアンッ! 「…なんだ、騒々しいな」 勢いよく理事長室の扉を開ける。息切れが激しく、喋れそうな状態ではない。 「何をそんなに急いでいる」 理事長室の中に堂々と置かれた机から、落ち着いた声が響く。 金髪の長いツインテールを揺らし、理事長と呼ぶには若く、美しい風貌。 「っ……理事長…代理! 大変です!」 生徒は息を整えながら切々に話す。 「…慰霊塔上空に…翼の生えた魔族と思える影がっ…」 理事長代理と呼ばれた少女はふっ、と笑った。 「―そうか。わかった。 …魔族め、生きて帰れると思うなよ…」 理事長代理はどこから持ち出したかわからない銃を手に持ち、ベランダに出た。 そして、身軽な体で戦線学園の屋根へと上っていった。 、
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