81人が本棚に入れています
本棚に追加
―戦線学園敷地内。
北西の位置にある大きな慰霊塔。それは、戦いで殉職した者や命を落とした者達を弔う神聖な場所であった。
ここで祈りを捧げていた一人の生徒がふと空を見上げた。
綺麗な星空であった。月明かりが眩しく、夜空はほんのり明るい。
そんな景色に見とれていると、一瞬空に不穏な影が過った。それは翼が生えており、生徒は顔色を変えた。
「……魔族っ!?」
生徒は急いでこれを伝えるために学園の理事長の元に駆けた。
広い広い敷地内、生徒は全力で理事長室を目指した。
バァアアアアアアンッ!
「…なんだ、騒々しいな」
勢いよく理事長室の扉を開ける。息切れが激しく、喋れそうな状態ではない。
「何をそんなに急いでいる」
理事長室の中に堂々と置かれた机から、落ち着いた声が響く。
金髪の長いツインテールを揺らし、理事長と呼ぶには若く、美しい風貌。
「っ……理事長…代理!
大変です!」
生徒は息を整えながら切々に話す。
「…慰霊塔上空に…翼の生えた魔族と思える影がっ…」
理事長代理と呼ばれた少女はふっ、と笑った。
「―そうか。わかった。
…魔族め、生きて帰れると思うなよ…」
理事長代理はどこから持ち出したかわからない銃を手に持ち、ベランダに出た。
そして、身軽な体で戦線学園の屋根へと上っていった。
、
最初のコメントを投稿しよう!