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「おはよう林檎」
「あ、おはよう杏ちゃん」
とある市立中学校の通学路。一人の女子学生があいさつをする。
「…………うーん」
「何だ、珍しく考え事か? 林檎らしくもない」
並んで歩く二人。考え事をしながら歩く小柄な女子。彼女の名前は藤森林檎。それなりに個性のある中学二年生である。名前をどうやって読むのかたまに聞かれるが、読みは「りんご」である。
「実は、昨日の夜からずっと気になってた事があったんだけど……」
「うん。どうしたん?」
「黒板消しトラップってさ、ドアにかなりくっついてないと頭に当たらないよね」
「……………………はあ」
黒板消しトラップ。教室に置いてある黒板消しを教室のドアに設置し、ドアを開けた瞬間黒板消しが落ちてくるアレだ。
「杏ちゃんもそう思うよね!」
「……まあ」
曖昧に返事をした林檎より背の高い女子。名前は木更津杏。杏と書いて「あんず」と読む。林檎と同じクラスであり、二人は親友同士でもある。
「そこで! 今日は教室に行ったら黒板消しトラップを設置します!」
突然訳の分からない事を言う。いや、林檎が突然訳の分からない事を言って周囲を振り回すのはよくあることだ。杏も林檎の言動にいちいち疑問を投げかけないようになった。慣れというのはかくも恐ろしいと、杏は心の中で呟く。
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