1人が本棚に入れています
本棚に追加
トラップの被害者に林檎が駆け寄る。林檎だけでは不安なので杏も席を離れ、被害者の元へ向かう。
「えっと、ざくろちゃんごめんね。実は昨日の夜から黒板消しトラップについて考えてて」
「……これ」
「え?」
「これ……林檎ちゃんがやったの?」
「うん。えっと、黒板消しトラップってなかなか引っかからないよねって……ざくろちゃん?」
黒板消しトラップの被害者。名前は霧島ざくろ。無口で声が小さい。背は杏よりも高い。というより、女子の中ではかなり背の高い部類に入る。それで無口なのだから周りからは勝手に大人っぽい印象を植え付けられている。
「どうかしたか、林檎」
「杏ちゃん……どうしよう、ざくろちゃん泣いてる」
見ると、ざくろは下を向いて顔を拭っていた。周りからは大人っぽいと思われているざくろだが、その実人一倍泣き虫。当然こういう事があると、わけがわからずに泣き出してしまう。
「ざくろ、いつものこいつのイタズラだ。許してやってくれないか?」
「……それはいいんだけど……痛かった」
「ええっと、ごめんねざくろちゃん。どこに当たったのかな。私もまさか黒板消しが半回転するとは思わなかったから」
林檎がざくろの頭をさする。頭のどこにぶつかったとかは言っていないので林檎のさすっている部分が黒板消しの当たった部分なのかはわからないが、彼女なりの精一杯の詫びの気持ちなのだろう。
「うん……ありがとう……もう大丈夫」
「そう? ごめんね」
林檎の言葉にざくろが微笑みかける。そこでホームルーム開始を告げるチャイムが鳴る。
「じゃあ、戻ろうか」
「うん。……あ、そうだ」
林檎がポケットから例の袋を取り出す。
「これいる?」
粉々になったクッキーの入っている袋を差し出す。ざくろはさっきより少し堅い笑顔を見せると。
「……いらない」
と言った。
最初のコメントを投稿しよう!