一日目:賑やかで騒がしい

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時は移って、二時限目終了後の休み時間。 林檎と杏とざくろが教室の一点に集まって談笑をしていた。 「林檎、あんた授業中寝てただろ」 杏が言う。その言葉に一番早く反応したのはざくろだが、誰もその事について言及はしなかった。 「えへへー、国語の授業ってつい寝ちゃうよね」 「お前はどの授業でも寝てるだろ」 そうなのかと、ざくろは林檎を見る。授業中は集中しているからあまり周りは見ない。さっきの授業は偶然隣を見てしまったに過ぎない。 「で、ざくろが林檎を起こすためにいろいろやってたんだよな」 「……杏ちゃん気付いてたの?」 ざくろが顔を真っ赤にする。見られていたという恥ずかしさのせいだ。林檎はやはりざくろの行動に気付いていなかったようで、新鮮な反応を見せる。 「そうだったんだ? うん、でも、そんなことしなくても大丈夫だよ」 「え?」 ざくろが首をかしげる。杏は呆れている。何か知っているのだろうか。 「林檎は予習復習完璧だもんな」 「うん。どこをやってるのか、一瞬見れば大体わかるよ」 「そうなの?」 だとしたらすごい。予習復習をしているだけでなく寝ながら授業を受けられるのだ。素直に尊敬をしてしまう。 「え、でも……」 ざくろが申し訳なさげに質問をする。 「林檎ちゃん、たしかテストの点良くないよね」 「あー、それは……ね」 杏が思わせぶりな事を言う。そして思わせぶりな視線を林檎に送る。林檎は照れたように。 「テスト見てると眠くなるよねー」 と言った。 「…………」 竜頭蛇尾。いや、本末転倒。この言葉がまさに林檎に似合うだろうと、ざくろは苦笑いを浮かべた。
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