1人が本棚に入れています
本棚に追加
時は移って、昼休み。
林檎は一階にある自動販売機にジュースを買いに来ていた。
「お、ざくろちゃーん」
視線の先。自動販売機の前にざくろがいた。彼女も飲み物を買いに来たのだろうと思い、声をかける。
「林檎ちゃん、どうしよう」
「どうしたん?」
ざくろに駆け寄る。ざくろは自動販売機に紙幣を入れている。
……が、おかしい。自動販売機は紙幣を入れたかと思うと、すぐに吐き出してしまう。ざくろはそれを何回も繰り返しているようだった。
「さっきからずっとこうなの……どうしよう」
「んー、壊れたのかな」
林檎が自動販売機を叩く。が、もちろんそんな事で自動販売機が直るはずもなく、紙幣を取り込んでは吐き出す作業を繰り返している。
「ちょっといい? 私の千円で試してみる」
林檎が財布から一枚の紙幣を取り出し、自動販売機に入れる。すると紙幣を入れる所のすぐ隣にあるランプが光り、千の数字を示す。
「私のは大丈夫みたいだね。うーん、何でだろう?」
自動販売機のボタンを押し目的の飲み物を取ると、林檎は再び考える。自分のは大丈夫だった。つまり自動販売機の故障ではない。
「ざくろちゃん、ちょっとお札見せて」
「うん……」
ざくろの持っている紙幣を受け取る。もしかしたら紙幣にしわがあって自動販売機が読み取ってくれないのかもしれない。林檎はそう思った。
「どれどれ……しわはないなー…………ってあれ?」
林檎が顔をしかめる。そして同時に林檎は自動販売機が紙幣を吐き出す理由を悟った。
最初のコメントを投稿しよう!