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目の前で行われる大山君と羽柴君のじゃれ合い。
特進科時代にはなかった光景。
今日が始まってそんな時間が経っていない筈なのに私はどれだけ驚いているのだろう。
「てかその人誰?」
「失礼にも程があるだろ…」
「だって去年見た記憶ないし……いや、あったか…?」
「お前の記憶が乏しいのは分かったから席に戻れよ」
「……何か当たりキツくね?」
「いつも通り、通常使用だよ」
会話の主な内容は私の素性について。
なのに私が一切会話に絡まずとも会話が続くのはすごいと思う。
それにさっきまで優しくて良い人だと思っていた羽柴君は大山君に対して意地悪な態度をとっているのも驚きだった。
やっぱり第一印象と本質がぴったり一致なんてこと滅多にないんだと実感させられる。
「…えっと……、は…早坂雫です」
「んぁ…?……あぁ!!俺は大山悟(サトル)な」
「いや、早坂さんも自己紹介してる場合じゃなくて…」
「大山ぁっ!!早く席に座らんかぁっ!!!」
羽柴君が言い終わる前に先生の叫び声が教室に響き渡った。
教卓の前にいるのは生徒指導の先生で体育担当の梶山(カジヤマ)先生。
厳しくてノリの良い先生だと聞いたことがある。
「カッジー何でいんの?」
本当に素で驚いている大山君。
その反応に何人か噴き出した。
他の人も必死に笑いを堪えているように見える。
「…何でだと…?」
「だってカッジーの来る理由ってないだろ?」
「今日はお前ら春休み明けテストで俺が監督できたんだよ!!いいからさっさと座りやがれってんだ!!!」
梶山先生が怒鳴り、クラス全員てで笑い出した。
これがテスト開始二分前に起きた出来事だった。
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