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すぐ隣で聞こえた声に私は思わず動きを止める。
ゆっくりと振り返るとそこには花見に移動する様子の羽柴君ただ一人。
「……花見、行かないの?」
「えっと……その…」
「行こうよ」
花見に行きたいと思う。
でも私が居ても居なくても変わらない。
友達もいないなら作れる気すらない。
だから帰ろうと思った私の心を読んだような羽柴君の発言に私はまた動けなくなった。
「行きたいですけど…」
「けど?」
「……私が居ても居なくても変わらない、と思います…」
「………」
黙ってで私の言葉を聞く羽柴君。
よく考えると自分の意見をちゃんと聞いてもらえたの久しぶりかもしれない。
すると頭にぽんっと何か乗る。
それが羽柴君の手だと気付くのに数秒かかった。
「居なくても変わらないなんて寂しいこと言わないでよ」
「さび、しい…?」
「少なくともオレは早坂さんが来ないと寂しい」
「……?」
「それとも早坂さんはオレが寂しくても構わないの?」
首を傾げる羽柴君に必死に首を横に振る。
構わないわけない。
新しいクラスになってこんなに話しかけてくれている羽柴君に寂しい思いさせて平然となんて出来ない。
すると私の気持ちは羽柴君に伝わったらしく「よし!」と笑顔を向けてくれて、私の心臓がドキッと音を立てた。
その時聞こえた心臓の音に何の意味があるのか、私はまだ理解出来ていなかった。
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