花見

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「今回花見する場所はオレと大山とシンが去年見つけた所なんだ」 「去年…?」 「入学式前に一旦集合しようとして偶然ね。オレ達中学から一緒だからさ」 あれから羽柴君と一緒に教室を出た。 時折落ちてくるらしいスポーツバックを肩にかけ直しながら沢山話してくれる羽柴君。 私よりも大分上にある頭が私の方を向いているのを感じながら廊下を進む。 ………顔を見ながら話したりすることなかったから上を向けない。 「(でも、わざわざ見てくれているんだし……やっぱり顔上げたほうがいいのかな…?)」 思い切って顔を上げて羽柴君を見上げる。 すぐ――というか直後に目があった。 覚悟を決めたはずなのに実際目が合うといとも簡単に恥ずかしさと驚きで一杯になって顔を下に向ける私。 ……すごく情けない。 「早坂さん?」 「……す、すみません…」 やっぱり慣れないことをするもんじゃない。 変わるためには『変わりたい』と思うだけじゃなくて度胸も必要なことを忘れてた。 「どうかした?」 「は、羽柴君が…」 「オレ?」 「その、私を見て話してくれるので……私も見ようと、思って……!!」 「努力、したんですが…」と尻すぼみに言うとまた一段と恥ずかしくなった。 本当に情けなさ過ぎる。 「……うん。努力は、良いことだと思うよ……………うん」 「?」 今まではきはきと話していた羽柴君がいきなり歯切れの悪い話し方になる。 なんだか、さっきの私みたい。 顔を上げようとすると目の前が真っ暗になる。 肌に当たる大きな――手? 「……ごめん、今オレを見ちゃ駄目」 「え、あの……?」 「ダブルでダメージくらっちゃって、絶対オレひどい顔してるし…」 目の近くに感じる羽柴君の手のひらの熱。 凄く熱くて、触れたところから熱が伝染してしまいそうだった。
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