7人が本棚に入れています
本棚に追加
「――…ごめん、もう大丈夫」
「は、はい…っ!!」
あれからほんの数秒間見えなかった視界が開けていく。
一番最初に見たのは羽柴君のスポーツバック。
次に見たのは……羽柴君の顔。
ドキッと音を立てる心臓。
「「………」」
……~♪~~♪♪
お互いに何も言えず固まっていた私達の耳に突然大音量の音楽が聞こえる。
音は羽柴君のスポーツバックの中から。
「シンからだ」
「シン…?」
「うん」
……………。
えっと、出ないんですか…?
「――…あ、見つけたぁっ!!」
シンとは誰なのか聞こうとすると右側の廊下の向こうから声が聞こえた。
振り返るとそこには長身の女子生徒がケータイ片手にこちらに向かって来ているところだった。
……もしかして、この人がシンさん?
「探した!!全く、いつになったら来るわけ!?」
「あー……ごめん」
「あたしにじゃなくてアンタを弱愛してる大山に……誰、この子?」
シンというくらいだから男の人をイメージしていたけれど、どうやらシンさんは女の人だったようで。
腰まで伸びた髪を持つ私とは違ってばっさりと切られたショートヘアー。
羽柴君とほとんど変わらないくらいの長身にはきはきとした話し方。
……見事に私と対称的。
「オレの隣の席で早坂雫さん」
「ほ~…?」
「よ、よろしくお願いします…!!」
「…………」
羽柴君にもしたように深々とお辞儀をするけれど何の反応も返ってこない。
顔を上げると………何故か思いっきり抱きしめられた。
「可愛いっ!!」
「………え…?」
予想外の事態にシンさんの後ろで苦笑している羽柴君に視線を向ける。
というかシンさんの抱きつく力が強すぎて………本当に……く、苦しい…。
「ごめんね、シンは無類の可愛い物好きなんだよ」
清々しいほどあっさり言われた言葉に私は絶句した。
最初のコメントを投稿しよう!