花見

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なんか益々抱きしめる力が強くなってきた。 息するのにも辛くなってきた感じがする。 ……もしかして私、今死ぬの? 「……シン、早坂さんの目が死にかけてる」 「え?うわっ!?ごめんね!!」 「だ、大丈夫です…」 喉から一気に体中に酸素が入り込んでくる。 あまりの勢いに咽せるとシンさんに凄く必死に謝られた。 悪気はなかったから良いのかといえば違うのかもだけど悪い人には見えない。 「あ、自己紹介してなかったね。あたしは野宮真(ノミヤ マコト)、湊の隣で『早坂』ならあたしは丁度目の前の席かな?」 「それで合ってるよ」 「だよね!!こんな可愛い子と席が近いなんて超至福だわ~!!」 まさか目の前の席の子だったとは思っていなかった。 どれだけ自分が下しか見ていないのか此処で自覚する羽目になるとは…。 しかし驚くと同時に一つの疑問がよぎる。 「ま…こと…さん?」 さっきから羽柴君は『シン』と呼んでいるからシンさんだと思っていた。 けれど本当の名前はマコトさんで…。 本人が言っているのだから嘘なわけないし、でもならシンと呼ばれても訂正しないのは何故だろう。 訳が分からなくなって尋ねてみると二人とも驚いた顔をした後思いっきり笑い出した。 「ご、ごめん、ごめん!シンはあたしのあだ名なの」 「マコトって『真』って書くんだけどよく先生にシンって呼ばれてたからそれが定着したんだよ」 「なるほど…」 あだ名があってそれを呼ぶことを野宮さんは羽柴君に許してる。 それぐらい仲が良いんだなと思っていると、少しだけ面白くない感じがした。 あれだけ驚いたりしてもっと話を聞きたいなと思っていたはずなのに。 ……面白くない。
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