花見

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「てか花見行こうよ!!お菓子なくなる!」 「……シンが早坂さんにメロメロになってたからじゃん」 「うるさいっ!!」 いつの間にか野宮さんと繋がれた手。 野宮さんが走れば当然私は引っ張られるわけで。 次々と過ぎていく教室達に目を回しながら気づけば玄関で靴をかえて外へいた。 一度も離れない手の温もりが心地よくて、そっと力を入れてみる。 「(手を繋ぐなんて何年ぶりだろ…?)」 小学校以来かな? それからは殆ど繋いだことがないような気がする。 ……友達の作り方が分からなくなったから。 「――…っし、到着!!」 野宮さんの満足そうな声を聞いて顔を上げた。 そこに広がっていた光景は大きな満開の桜と楽しそうなクラスメート達の姿。 ……まるで宴会会場みたい。 「あ、やっと来たな!?」 私達を見つけた大山君がこっちに走ってきた。 片手にポテトチップスの袋が握られている。 もう殆ど入ってはいないようだけど。 「遅いんだよ!!もうポテチがコレしか残ってないくらい遅い!」 「ごめん!!」 「てか何でポテチ基準なんだよ」 パッケージに大きく書かれた『BIG!!』の文字。 それが殆ど残ってないのは確かに驚きだ。 でも羽柴君の言うとおりポテチの残量が時間の基準になるとは考えにくい。 「つか何でこんなに遅いんだよ」 「シンが早坂さんにメロメロだったから」 「だからごめんってば!!」 「呼びに行った奴がそんなんでどうするんだよ…」 「(……って、あれ?)」 確かにそれもあるけど、元はといえば私と羽柴君が遅かったのが原因だったんじゃなかったっけ? だから野宮さんが呼びに来て……。 ちらっと羽柴君を見ると目があった。 そのまま羽柴君は口に人差し指を添えて小さく「しー…」と言う。 ……もしかして羽柴君はこうなるように野宮さんの電話に出なかった? それで野宮さんを私に会わせれば違う理由を上書き出来るから。 ――…わざと? 「(羽柴君、意外と策士だったんだ…)」 今朝大山君が羽柴君に言っていた『ドS』というのは間違いじゃないのかもしれない。
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