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「……は、羽柴君…!!」
遠くに見える羽柴君に声をかけようとして名前を呼ぶ。
距離が結構あるにも関わらず、私の声は普段の声と変わらないくらい小さな声。
聞こえるはずがないけれど姿を見つけてしまったら声を出さずにはいられなかった。
すると振り向くはずのない羽柴君が私を見た。
それだけでも驚きなのに、羽柴君は大山君達に許可をもらって私の方へ小走りでやってくる。
到着するまでの間、私はちゃんと話せるように心を落ち着かせながら羽柴君を待った。
「どうしたの?」
「あの、友達が…!!」
「?」
「……友達が、出来たんです…!!」
あの静寂の後二人には思いっきり笑われた。
『よろしくね?』と南條さんに優しく微笑まれたときはまだ実感がわかなくて。
『アンタみたいなタイプ、あたし結構好きだよ!!』と坪倉さんに背中を叩かれたときはその痛みと衝撃で体がよろめいた。
『あたしも仲間に入れてよ!!』と野宮さんの声を聞いてやっと声がでた。
「『友達に、なってくれるんですか?』って聞いたら『当たり前』って言われて…!!」
「うん」
「その『当たり前』が私には凄く嬉しくて…!!」
そしたら堪らなく羽柴君に会いたくなった。
最初に話しかけてくれたのも、花見に来るように説得してくれたのも、応援してくれたのも。
全部全部、羽柴君だから。
「羽柴君のおかげです!!私が頑張れたのも、友達が出来たのも…!!」
「そんなこと…」
「私……!!」
特進科から普通科へ移動になったとき、とても不安でいろんなことに押しつぶされそうだった。
友達なんて出来ない。
これから先、ずっと出来ないと思ってた。
「……友達なんて、出来ないと思ってた…。だから、作るきっかけをくれた羽柴君には凄く感謝してます…!!」
「きっかけって、今回の花見は大山の企画だよ?」
「でも……帰ろうとした私を引き止めて此処まで連れてきてくれたのは羽柴君です」
今なら分かる。
あそこで野宮さんとわざと合流したのは、本当は私を此処までちゃんと連れてくるためだったって。
玄関で逃げ出さないように。
ちゃんと此処までくるように。
羽柴君はそこまで考えてくれていた。
おかげで友達が出来た。
不安だった普通科での生活がすごく楽しみになった。
「本当に、ありがとうございます…!!」
――…羽柴君がいてくれて本当に良かった。
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