7人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
その後羽柴君は少し黙ってから小さく声を出して笑い出した。
少し驚いていると次はしゃがみ込んだので一緒になって私もしゃがみ込んだ。
まだ震えている肩。
……こんなに羽柴君を笑わせてしまっている原因って何だろう？
「――…ご、ごめんね。何か一気に馬鹿らしくなっちゃって…!!」
「？」
「あー、馬鹿だなぁ……オレ」
小さく呟いた言葉は私には聞こえなかった。
なかなか頭を上げない羽柴君を立ち膝のまま少し不安げに見つめる。
すると不意に羽柴君が顔を上げた。
「――…てか、オレ的にはもう早坂さんと友達だと思ってたのになぁ～？」
「そ、そうだったんですか…!?」
「そっか、早坂さんにはそう思われてなかったんだね…」
まさか既に羽柴君は私を友達と思ってくれていたなんて。
嬉しさと同時にどうして気付けなかったのかと自己嫌悪。
鈍くてごめんなさい!!
「私本当に鈍くて…」
「そうだね……くくくっ…」
落ち込む私の耳に聞こえたのは羽柴君の笑い声。
顔を上げれば口を右手で押さえて笑う羽柴君の姿。
まるで悪戯が成功した子供のような笑顔。
……ちょっと、可愛い。
「か、からかったんですか？」
「うん、ごめんね？」
……羽柴君、その言葉に全く謝る意志が感じられません。
「オレと友達なって良かったの？オレ、凄く意地悪だし我が儘だよ？」
確かにそんな質問をする羽柴君は凄く意地悪だ。
でもここで引いたらそれこそ駄目。
私はさっきは出来なかった目を合わせて話す決意をした。
大丈夫、頑張れる。
「か、覚悟してます…!!」
すると目を合わせて話したのが意外だったのか羽柴君が少しだけ目を丸くした。
でもまた小さく口端を上げて笑顔を作る。
「あはは、そっか。――…じゃあ、覚悟してて？」
その笑顔にまた胸がドキッとした。
羽柴君を見ていると落ち着かなくなる私の胸の鼓動。
笑顔を向けてくれるとすぐに大きく高鳴って。
今まで実は動いていなかったんじゃないかって思うくらいせわしなく動く。
理由なんて分からない。
ただ少し、ほんの少しだけど。
この感情に気づいてしまうのが怖かった。
最初のコメントを投稿しよう！