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高橋先生と話し終わってすぐに教室に先生が入ったことで私の席の近くにいた人の塊はいなくなった。
やっと席に座れる。
そう思ってスクールバックを抱えながら教室の一番端へ向かう。
実際は三十分前から来ていたはずなのに、周りには遅刻ギリギリに登校してきたように見えているのかもしれない。
そう思うと無性に恥ずかしくなってスクールバックに顔を埋めた。
「(早く、席に座ってしまいたい…!!)」
長めの前髪を使ってさらに視界を狭めた状態で席に着くとほっと息をついた。
そして前を見れば机の上に缶ジュースが置かれていた。
勿論私の物ではなく缶の口も開いている。
「(だ、誰かの忘れ物かな…?)」
というか、もしかしたらもう中身は入っていない空き缶なのかもしれない。
だとしたら新しいクラスになった初日から私の机の上はゴミ置き場になったということだろうか。
「…………」
とりあえずこのまま置いておいたら先生に注意されてしまうかもしれない。
すぐに片付けられなくても先生の視界から見えない場所に置いておこうと缶に手を伸ばす。
けれど缶は私の手に収まる前に目の前から消えた。
「――大山!!」
ふと視界の隅に何かが見えた気がして思わず振り返る。
そこにいたのは立ち上がって缶を持った右腕を振りかぶる男の子。
名前を呼ばれた彼が振り向いた直後に額に当たる缶。
全てが私には予想の出来なかった。
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