第一印象

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缶を投げた男の子。 そして缶を額に投げられた男の子。 クラスメートの全員の視線がその二人に注がれている。 「(缶を投げるなんて………って、缶…?)」 もしかしなくてもあの缶は私の机の上に置いていた缶なんじゃ…。 「――…みーなーとーっ!!」 「忘れ物、ちゃんと持ってけよな」 怒る大山君と笑うみなと(?)君。 対称的過ぎて私は周りのクラスメート達のように笑って流すなんてことは出来なかった。 むしろそのままHRが始まるこの状況が異常にすら感じる。 「ごめんね、吃驚したでしょ?」 ぼーっとしていた私にみなと君は笑顔を向ける。 ……果たして吃驚したというのは何に対して言っているのだろう。 彼の周りに十数人の集団が出来ていたこと? それとも机の上に缶が置かれていたこと? さらにその缶をあなたが大山君に投げつけたことか…。 いずれにいても私が驚いたことには変わりないのだけど。 「い、色々と…」 「ごめんね」 「えっと、大丈夫です」 こういう時、どうすれば正しいんだろう。 会話を続けるべきなのか、それともHRだし会話を終わらせるべきなのか。 特進科じゃ誰かと会話するなんて殆ど無かったから分からない。 休み時間はみんなして勉強してたし…。 「………」 結局黙ってしまう私はどう思われたのだろう。 嫌な子とか思われてたらどうしよう。 こんなに不安だらけの高二の初日なんて予想外だった。
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