プロローグ

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  アスファルトに人が倒れているのを見た。 昼間に比べたら人通りの少ない夜のバスターミナル、知られざるもう一つの待ち合わせスポットモヤイ像。 此処からではその横顔しか見る事は出来ないがその姿もどこか悲しげに見える。 続けて悲鳴、アクセル音、悲鳴、悲鳴、悲鳴。 私の下に「私」が倒れているのを見た。 みるみる内に黒いアスファルトの上を真っ赤な血が流れていき黒と混ざってどす黒く染まる。 集まって来た人だかりの中にピクリとも動かない私がいる。 即死だよと囁く声を私は上の方から聞いていた。 足の下には頭、頭、頭。 その人だかりのずっと向こうに私は確かにみた。 バンパーが歪にへこんだ真っ黒の車、ヒビの入ったフロントガラス、黄色のナンバープレート… 私は瞬時に理解した。 運転席に座っていたあの男。 彼が私を「ひき逃げ」したのだと。 …約束があったのに。 …私には此処で会う人が居たのに。 私はまだ、死ぬわけにはいかないのに… 許さない。 絶対に許さない。 遠くに消えた車の影を私はキツく睨み付けた。 私は知っているんだ。 無念を抱いて死んだ人間には生き返るチャンスが与えられる。 試練を乗り越えたものだけが生き返られるという都市伝説。 私は必ず生き返る、この恨みを晴らすため。 生き返って私の最高の日を奪った男に復讐を。 「死神ゲーム」で。 私は「私」の死体を見下ろしていた。 赤に染まってしまった白いぬいぐるみを抱いて。  
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