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「此処はあなた方のいう渋谷とは少し違います」
妙に真面目くさった口調でそう告げる神無月の手にはマフィンが握られていた。
「アンダーグラウンド。UGともいいます。あの世でもこの世でもない別世界の渋谷です。情報は此処まで」
言うなりマフィンにかぶりついた神無月はさっきまでの無表情はどこへやらパアッと顔を輝かせた。
実際長い前髪で目は隠れているのだが、なんというかもう、食べかすをつけた口元がにっこりと…。
「もっと詳しく説明してくれ」
若干呆れながら訪ねる。
情報屋と名乗る割には情報が少なくはないだろうか。
「ほっはらひゃきは、じょーほー料もらひまふ」
「食べながら喋るな」
そういうと一度動きを止めてから再びマフィンを食べ始めた。
……どうやら喋らず食べる方を選んだらしい。
「…そろそろじかん、みっしょんがきます」
「え?」
さきほどと同一人物とは思えない幼い口調に神無月を見ると指先についた食べかすを舐めとりながら反対の手で携帯を弄っている。
―死後の世界って携帯使えんのか。
「時間ってなんのだよ」
「げーむ」
両手を払い神無月が短く答える。
ゲーム。
当然俺が参加する事になったゲームの事だろう。
死者の生き返りを賭けたデスゲーム。
その相手は死神。
故に通称死神ゲームと呼ばれるらしい。
ゲームマスター(GMともいうんだと神無月が言ってた)から毎日出されるミッションをクリアしながら七日間を生き抜いたら、死をなかった事にし生き返る事が出来る。
一度死んだ人間が再生のチャンスを得たって訳だ。
つまり。
神無月が言う事には。
UGと呼ばれるRGと並行するパラレルワールドの渋谷で七日間かけて七つのミッションをクリアした者だけが生き残るってこと。…多分。
ついでに、このゲームに参加する時に聞いた話だと、真っ先にパートナーとなる相手を探さなくては(面倒くせぇ)いけないらしい。
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