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俺は晩飯を味わって食べて、食器を片付ける。
「珍しい!何か有った?」
「これくらいはたまにはしないとな。」
俺はそう言って椅子に座った。
「兄さんが戦争に出ない理由は分かるけど、少しはこの国に貢献しないといけないと思うんだけど…」
マリアが食器を洗いながら言う。
「確かにそうかもしれないが、もし俺が死んだらお前はどうやって食っていくんだ?父さんや母さんのようになるのは嫌だし、お前の悲しむ姿を想像したくない。」
俺は少し声のトーンを変えて言う。俺達の両親は戦争で死んでしまった。だから俺は数年かけて魔法石を作る勉強をして工房を持てるようになった。
「…兄さんのその気持ちは分かるけど…」
食器を洗い終わりマリアも椅子に座った。
「心配するな。何とかなるさ。」
俺はそう言って珈琲を飲んだ。
「兄さんくらいになれば戦争で死んでしまう確率は低いと思うけど?」
褒めてくれているのだろうと思った。
「俺はまだまだ甘いよ。」
そういって椅子から腰を上げてマリアに魔法石を渡した。
「これは?」
「俺の魔力が篭っている魔法石だ。お前を守ってくれるよ。」
「あ、そうか、今日は私の誕生日だった。」
今日はマリアの十五歳の誕生日だ。十五歳になると両親が子供に自分の魔力の篭った魔法石をプレゼントする習慣がある。俺は貰ったが、両親が死んでいるため、親の代わりに俺が渡したのだ。
「あぁ、誕生日おめでとう。」
俺はそう言って自分の部屋に戻りタンスを開けた。
「俺はもう父さんや母さんの守りが無くても大丈夫だからマリアにあげたよ。俺の魔力も一緒にね。」
タンスに入れている両親の写真を見ながら独り言を言った。
「俺、父さんや母さんみたいな立派な魔法石師になるよ!」
そう言ってタンスを閉めてベッドに転がった。
『出来れば戦場は避けたいけど…』
心の中で呟いて俺は眠りについた。
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