5人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
クルースン……
あたしよりも一回りくらい歳上の人。
でもまだ新人。
あのジュピターの隠し娘だ、って噂もある。飽く迄噂だけど。
そんな事はどうだっていい。あたしの足さえ引っ張らなければ。
あたしは荷物を纏めて、ドアの前に立った。
部屋の方を振り返る。
こう見ると、女の子らしいものなんて何ひとつない殺風景な部屋。
あたしは部屋を出る時、いつもこうしているんだ。
――行ってきます。すぐ戻ってくるわね――
誰もいない部屋に向かってせいいっぱいの笑みでそう呟くと、あたしは大きなトランクを両手で抱えて、薄暗い部屋から出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!