ブラックファントム

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 クルースン……  あたしよりも一回りくらい歳上の人。  でもまだ新人。  あのジュピターの隠し娘だ、って噂もある。飽く迄噂だけど。  そんな事はどうだっていい。あたしの足さえ引っ張らなければ。  あたしは荷物を纏めて、ドアの前に立った。  部屋の方を振り返る。  こう見ると、女の子らしいものなんて何ひとつない殺風景な部屋。  あたしは部屋を出る時、いつもこうしているんだ。 ――行ってきます。すぐ戻ってくるわね――  誰もいない部屋に向かってせいいっぱいの笑みでそう呟くと、あたしは大きなトランクを両手で抱えて、薄暗い部屋から出て行った。
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