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「チャン・チャオミンさんね」
そう言いながら、眼鏡を少しずらした女性は、電話帳くらいある帳面をペラペラと捲り始めた。
「どこだっていいんです。お金が多く稼げれば」
「了解、ちょっと待ってね」
しばらくして女性の手が止まった。
「ここなんてどう? 」
そう言って女性が提示した場所には、しっかりと『ヨハン』の文字が見えた。
外国から入ってきた単身の女性の身がどうなろうと、この手の求人情報屋は構わないのだ。
よって、求める金額次第では、マフィア邸の女中の斡旋がなされる可能性も高くなる。
実はパスポートも敢えて少々偽造っぽく作ってある。
この手の情報屋が見抜ける程度に。
あたしは女性の顔をジッと見て、こくりと首を縦に振った。
「じゃ、決まりだね。これ、その家の住所だから。連絡はこっちからしておくよ」
「ありがとうございます」
求人情報屋を出てすぐ、あたしはカフェに飛び込んだ。
コーヒーを飲みながら携帯から侵入成功のメールを送る。
そう言えばクルースンはどうしたんだろう……
マーズの代わりにくる事になっているはずの、彼女の姿が見えない。
それともジュピターの決定を引っくり返す事が出来ず、マーズの方がどこかに潜伏しているんだろうか……
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