当主ヨハン

1/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

当主ヨハン

 ヨハンのいる別邸までくると、さすがに警備をする男たちの数も、屋敷の倍以上はいた。  入り口を固める男が四人。廊下を軍隊のように銃を片手に巡回している男が五人。  張り詰めた空気が建物全体に漂う。  あの男はこんな中で、安らぎを得られているのだろうか。  警備の男に通された部屋に入ると、ヨハンは力なく横たわっていた。 「おお、チャン・チャオミンか。こっちにきなさい」  あたしはヨハンに促されるままにベッドのそばまでくると、そこでヨハンは警備の男を人払いして、部屋はあたしとヨハンの二人だけになった。  一応、全てはカメラで監視されているので、下手な事は出来ない。 「ご主人様。お加減はいかがですか? 」 「もう少しこっち。儂の横に座りなさい」  あたしはヨハンの横、ベッドの端に座った。 「ものは相談なんだがな」 「はい」 「お前、儂の妻にならんか」 「え? 」 「何を驚いておる。それが目的だったのだろう? 」 「いえ、滅相もございません」 「お前は素直でいい。すぐに表情に出る」  あたしは慌てて両手で顔を覆った。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!