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「馬鹿、こんな所で恥ずかしいこと言うなって…」
思い切り叫んで一気に息を吸うと、誰かが腰に手を回して抱き寄せてくる。
私が驚いて振り向くとそこには充がいた
「充……」
側に居る充と目が合った私は思わず顔を赤くしてしまう
充の登場は彼にとって予想外だったらしく、僅かに体を強張らせていた
「嫁さんの為にさ、あまり問題を起こしたくはないけどさ……調子に乗りすぎんなよ、潰すぞクズが。」
彼を睨み付けた充は冷たく沈んだ口調で言い放った
私は充のこんな口調を何度か耳にしたことはあるけれど、その度に反射的に身を竦めてしまう
絶対に私には使わない口調でも側に居るだけでかなりの威圧感を感じる。
言われる方は私以上に威圧感を感じることだろう
体を跳ねさせる様に硬直した彼は暫くその場に立っていたものの、一台の車が近付き私達の視線が逸れた間に、逃げる様に走り去っていった
「すみませんっ、遅くなりましたっ!」
運転席から飛び出すように現れた茜は頭を下げてくる
それから直ぐに荷物をトランクに積んで、充はエスコートする様に私を後部座席に乗せて自分も乗り込む。
「それでは、予約してる空港近くのホテルに移動しますっ」
後部座席の私達に向けて行き先を告げた茜はゆっくりと車を発進させてホテルに向かった
ホテルに着くまでの間、私は充に体を密着させていた
理由はないけど、ただ…そうしていたかったから。
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