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女性に傘を渡して雨に濡れながら帰宅した日、望はその理由を聞くことはなかった。 俺は、傘をどうしたのかと聞かれれば、本当の事を話すつもりだったけれど 望は何も聞かず、馬鹿とだけ言って濡れたスーツを拭いていた 傘を貸した日から3ま日後の仕事終わり、何時もの時間に帰宅しようと外に出た俺は、後ろから声を掛けられた 「あの、四宮さん…この前はありがとうございました」 振り返るとそこには傘を貸した女性がいて、傘を片手に頭を下げてくる 「あ…どういたしまして」 彼女は俺を知っているようだが、俺は彼女を知らなかった。 その為、適当に言葉を選んでぽつりと漏らした 「あの…私、今年入社した高瀬麻友です。」 俺が自分の事を知らないのだと感じた彼女は傘を差し出しながら自己紹介をした 「俺は四宮充、よろしく」 差し出された傘を受け取って、俺も一応自己紹介をしておく 「こちらこそよろしくお願いします。…あの…傘のお礼がしたいので、食事でもどうですか…?」 麻友は俯く様に顔を伏せて、俺の様子を伺うように上目遣い気味に見てくる
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