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「--大丈夫」
思考を巡らしているアカリの背後からそう女の子の声が耳に届く。
しかし、その声は震える物で、精一杯喉から絞り出した事が窺えた。
アカリはそんな女の子にチラッと視線を送ると……目頭に溜まった涙を拭いている姿が目に宿る。
「私が時間稼ぐから、此処から離れて」
アカリはそんな女の子に微笑みを浮かべると、庇うように視線をシャドーに戻した。
「ありがとう」
女の子は相変わらずの震える声でアカリを尻目にそう伝えると、シャドーから遠ざかって行く。
----そして
その様子を窺っていたユキが声を荒げ叫んだ!!
「アカリちゃんもシャドーから逃げて下さい!!」
しかし、アカリはユキの言葉を受け入れない……
ユキは不安を露にし「どうして?」と疑問の声が漏れている。
(此処で私が時間を稼がないと……
きっと、みんなが危ない目にあってしまう。
特殊部隊……せめて、先生が来るまで……)
シャドーは眼下に映るアカリを敵として認知したのか、眼光に鋭い殺気が籠っている。
アカリはそんなシャドーを見据えながら、冷や汗をかき身構えた。
シャドーは両腕をアカリに向かって顔の位置まで掲げると、次々に物凄いスピードで伸縮させ、獲物を狩る為動き出した。
アカリは瞬く間に伸びて来る腕を身体を反らしながら、何とか避けているが……ジワジワと体力が削られ、肩を縦に揺らし、呼吸が乱れている。
(単調な動きね。
此れなら……まだ……)
アカリがそう思い油断していると……
シャドーは腕をくねらせ、大きく後ろに反動をつけ、鞭の様に振って来た。
『しまった……』
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