特別待遇民

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「よっこらせ・・・・ さ、もうすぐ新しい家での生活が始まるんだ。 引っ越しが済んだら、ささやかなお祝いをしよう。」 男は段ボールに包装された荷物を自家用車から持ち上げ、運ぶ。 「よし、これで最後だ・・・・・ 一息つこう。」 男と男の妻、そしてその2人の長男は手持ちの水分を二口ほど飲み、新築のソレを見上げ、何とも言えない思いがそれぞれの胸に込み上げる。 地上での生活を思い出し、自然と涙が込み上げる。 妻は夫が外科医であることを自分の事のように誇った。 “自分達の家族は救われたのだ”     “生き残った”    “選ばれた・・・・・・” 感無量の思いが、膝を折らせた。 「大地、あなたもパパのような・・・・ 人から認められる立派な人間になるのよ・・・・」 当時6才の大地は、ソレを正視しながら静かに頷いた。
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