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「もしもし、あずみ?」
「なに?」
その途端、母親は電話口で大きなため息をついた。
「あんた土曜のこの時間にまだすぐに電話に出れる状況なの?」
「なにが言いたいのよ?……ちょっと…」
「恋人と一緒じゃないのかって言いたいの」
「……またその話?そんな事言うために……ちょっと!」
「なに?なにしてんのよ?ちゃんと話聞いてるの?」
「聞いてるよっ……もうっ」
「はやくいい人見つけて結婚してよ」
「相手がいないとは言ってないでしょ!」
「いるんだったら早く連れてきなさいよ。あんたももういい年なんだから。それともなに?会わせられない様な相手なの?」
「そのうちね!いま忙しいからまたね!」
あずみはそう言って電話を切り後ろから抱きついている男を睨んだ。
「電話してたんだけどっ」
「知ってるよ」
男はしれっと言い後ろからまた抱きしめる。
「……なあ」
耳元で聞こえる彼の声は、いつもと少し違った。
「なあ、そろそろ俺と……」
「ちょっと待って」
あずみは男の言葉を遮ると腕の中から抜け出し振り返り男と向かい合った。
「あたしね……――」
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