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そしてもう一度咳払いをすると真剣な顔になり覚悟を決めあずみを見つめた。
「あなたが好きです」
真剣な目で言われ、自分から告白をふっかけ、更には自分が告白されたわけでもないのにドキッとし身体が熱くなってしまった。
「……あはっ、何か照れた」
「好きです」
「もういいよ。はい、練習終わりっ」
胸がドキドキし火照ってきた顔を手でパタパタとあおいでいると、向かいあって座っていた誠の顔がなぜか近づいてきた。
そして止まることなく唇が重なった。
店内では相変わらず音楽が流れ、会社の人たちが沢山いる。
突然の出来事に、あずみの頭の中は真っ白になっていた。
そしてゆっくりと唇が離れると「俺の好きな人はあずみさんです」という言葉と真剣な顔。
「な、なに言って……じょ、冗談やめてよ」
真剣な眼差しのまま見つめられ一気に酔いが覚めたあずみ。なんとか出た声は掠れていた。
それでもあずみは真っ直ぐに見つめてくるその視線から目をはずすことが出来ない。
その時間が永遠かと思うほど長く感じた。
どこかで大きな笑い声がおきた。
ハッと我に返りとっさに唇を押さえ立ち上がると「ごめん、ちょっと……」と掠れた声で言いながら席を離れた。
「あれあずみ、どうした?」
途中、雅美に会ったが気分が悪いからと嘘を付いて店を後にした。
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