イツメン

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「彼女さんですか?初めまして!俺、野田って言います」 野田と名乗った男性は、大げさにズボンで手を拭きあずみに握手を求め手を差し出した。 「おい野田っ、触んな。お前のバカがうつる」と差し出された手を誠が払いのけた。 「うつんねーよ」 「どうだか……」 「じゃあ、お前にうつしてやる」 そう言って誠に抱きつき唇を突き出した。 「っざけんな!……」 ワイワイとじゃれあっているその姿を、あずみは懐かしそうに見ていた。 「ほら彼女がひいてる」 そんな様子を見た他の男性がそう言ってあずみを見た。 「あ、いえ……」 首を横に振り否定し笑った。 「またな」 名残惜しそうな野田を誠から引き剥がすと、友達はそれを引きずって行ってしまった。 手を振って見送りながら「仲いいんだね」と笑った。 「おんなじ部活だったんです。部活中も一番怒られてたし……。指示は的確だったんですけどね」 「野球部だったけ?」 「よく知ってますね?」 誠は驚いて顔をあげた。 「履歴書に書いてあった」 「ああ、そっか……」そういい頭を掻いた。 「アイツとは一応二年バッテリー組んでましたから」 「そうなんだ。ねぇ……」 さっきの『イツメン』という言葉の意味を聞こうとして考え直し「……知ってる?この話」と話題を変え話しはじめた。
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