いち

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仕事を終わらせた俺は、いつも通りまっすぐ家に帰った。 辺りは既に、日が暮れている。 家で待つ恋人の為に、出来るだけ早く帰ることを心掛けている。 山に沿って作られた街だから、坂道が多い。 俺と彼女が住んでいるアパートも、急な坂の上にある。 彼女は汗をかくことが嫌いだから、一人で出歩く事はあまりない。 いつも部屋の中にいる。 元々低血圧なのもあるし、日光アレルギーなのも理由だろう。 長いコンクリートの階段を昇っていく。 車を買うことも考えたけど、たまに買い物に行くくらいで車を買うのは勿体ない。 仕事場は近いから、バスで行ける。 階段を昇り終えると、広い公園がある。 その向こうがアパートだ。 少し錆びた鉄の階段を昇り、2階の端。 203号室が俺と彼女の部屋。 俺はドアに手をかけた。
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