異世界へ

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あたしは怖かった。まず見ず知らずの人たちに付いて行くのはあまり良い気がしなかった。一歩が踏み出せなく、その場に突っ立ていた。 「なにしてるんだい。行くよ。」 男のほうがこちらを向いて声をかけてきた。そして左手首をつかんだ。ピリッとした。その痛みは男の方にもあったようだ。 「痛っ。」 「何?」 すぐに男は手首から手を離した。そして男はあたしの手首をまじまじと見た。女はこっちに戻ってきた。 「あぁ。なるほどね。ここに付けられていたんだね。」 ブレスレットのことを言っているのだとすぐに分かった。 「ブレスレットのことを知っているの?あたしがここにいるのと何か関係があることなの?」 「フルのことだね。フルはあっちの世界の選ばれた人がつけられているのだよ。フルは力を制御するために付けられているのだよ。」 「選ばれるってどういう意味?力って何の力なの?」 男と女は顔を見合わせた。 「それは分からないんだよ。でも、それを取るとこっちの世界に来るのだよ。分かっているのはフルをつけている人がいて、フルの玉を毎年増やすことでフルは取れずにすむ。ここの世界に住んでいる人はみんなあっちの世界でフルをはずしてしまった。そして、いつの間にかここに来ていたのだよ。今の君と同じようにね。」 「まぁ、この話は船に乗ってからにしましょう。時間がないわ。」 女が今度は右手をつかんだ。そして、あたしを船にひっぱっていった。 そして、あたしを無理やり押し込むんだ。 「行くわよ。逸樹。満潮になったら、ここから抜け出せなくなる。」 「おうおう。分ってる。今出すよ。」 小さな船なのにエンジンが付いていた。逸樹はエンジンを動かした。船は動き出した。女は時計をちらりと見た。 「ギリギリってとこかな。満潮になる前には出られる。」 「満潮ってここの天井がつかる高さのことだろ?入り口ってここの天井よりも低い位置にあるよな。大丈夫なのか?」 「えっ。そうなの?だって、あたし今日ここでのはじめての任務なんだもん。」 「そうなのか?玲ちゃんはここの生活長いからよく知ってると思ったんだが。まぁ、そうと分かれば仕方がないな。でも、ラッキーだったなぁ。実は今日エンジンを信二に換えてもらったばっかりなんだ。少し飛ばしたかったんだよな。」
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